影と闇

ドアからその人物が顔を覗かせた瞬間、私と末那以外の女子全員が黄色い歓声をあげた。


それと同時に女子たちがその人物のほうへ集まったので、蘭子と理子ちゃんは女子と男子の間から脱出した。


ふたりはさっきまで苦しそうな顔をしていたのが嘘のような笑顔をその人物に向けている。


私と末那以外の女子全員が興奮した様子で声をかけるのを見て、誰が来たのか予想がついた。


女子たちの歓声を浴びているのは沖田くんだ。


昼休みに沖田くんが来るなんてめずらしい。


いったい誰にどんな用があるんだろう。


首をかしげて少しだけ背伸びしたそのとき、沖田くんが私に気づいて女子たちの間をかきわけて教室に入ってきた。


つかつかと歩いていき、私のところにやってきた。


私の姿を視界に映したのか、沖田くんがニコッと満面の笑みを浮かべた。


「片桐さん、話したいことがあるんだ。俺についてきてくれる？」


「へ……？」


自分のマヌケな声が聞こえた直後、女子全員が一斉にこちらを向いた。


私に近づかなかった末那も例外ではない。