影と闇

最後のグループ行動の日の朝に『昨日のおわびをしたい』というメモを残し、そのとおりに沖田くんが私のところにやってきて、蘭子が買ったショップ袋を持ってくれたこと。


忘れるわけがないよ。


注目を集める王子様の沖田くんにお姫様扱いされたことを忘れられるわけがない。


今の私が昨日までの私よりもお姫様っぽくなったかは別として、お姫様気分の感触はいまだに消えていなくて、記憶も色あせていない。


「すごく可愛くなったね……」


呆然とした沖田くんの口から漏れた言葉は、はたして本音なのかどうか。


考えまではしないけど、いちおう言葉を返すことにする。


「そうかな? だけど、私はもとから可愛くないよ」


はにかみながら、横の髪を耳にかけた。


べつに異性を意識してやっているわけではない。


イメチェンした日から、仕草について勉強しているだけ。


「沖田くん、前の私は地味だったでしょ? 親友の末那には『なんでそんなこと言うの⁉︎ 可愛いに決まってるよ!』って言われたけど、私は地味だと思ってたから……」