影と闇

私がニコニコと笑いながら名前を名乗ったことで、沖田くんは震える指を背中に隠し、こちらに歩み寄って私を見つめた。


たぶん沖田くんも信じていないと思う。


服装の変化にいち早く気づく蘭子でさえ、イメチェンした私に気づかなかったから。


男子で、しかも同じクラスではない沖田くんがイメチェンした私をすぐに私だと気づくはずがない。


「本当に片桐さん……?」


「うん。1日目のグループ行動の途中で雨が降って相合傘したり、私が泊まる部屋で寝たり、最終日のグループ行動で荷物持ってくれたり。覚えてるよ、ちゃんと」


目をしばたたかせる沖田くんの言葉に対して、すぐに言葉を返す私。


修学旅行中に沖田くんにされたことは今でも鮮明に覚えている。


集合時間がもうすぐだという最初のグループ行動の日に、沖田くんが傘を持ってこなかったことを理由に相合傘をしたこと。


相合傘した日の夜にホテルの【Special room】に入った私の顔色が悪いために私が泊まる部屋まで連れだし、部屋に着いた直後に沖田くんが倒れたこと。