影と闇

末那……どうして私の頬を叩いたんだろう。


頬を叩いた理由が全然わからない。


今の末那の考えていることもわからない。


じわっと涙が目からこぼれ落ちたとき、教室の外から誰かの声が聞こえてきた。


「あれ? 君は……」


今の時間は放課後。


クラスメイトたちはすでに帰っていて、蘭子は用事があるからと、理子ちゃんは塾があるからと言って先に帰っていた。


教室にいるのは私ひとりだけ。


ひとりでさみしい気持ちにひたる私に声をかけてきたのは、なんと沖田くんだった。


「沖田くん! ど、どうしてここに……⁉︎」


驚きの言葉を出さずにはいられない。


しかし、私よりも驚いていたのは沖田くんだった。


視界に映った表情とセリフがその証拠。


「えっ、なんで俺の名前知ってるの……?」


女子にモテモテな沖田くんでも、イメチェンした姿が私だとは思ってなかったようだ。


当たり前か。