影と闇

シャーペンを取ろうとした手を止めて黙り込む私に、蘭子が肩を叩いてきた。


「ごめんね、茅乃。冗談だったとはいえ、本気にしちゃったよね? 本当にごめんね!」


蘭子のことが嫌いだというわけじゃない。


セリフに嘘があるのか考えているわけじゃない。


私は……。


今思っている言葉を口に出そうとしたそのとき、目からポロッと涙がこぼれ落ちた。


その涙は頬をつたって、開いていたノートにポタッと落ちた。


涙をこぼした私を見て、蘭子がギョッと目を大きく見開いた。


「ちょっ、茅乃⁉︎ どうしちゃったの⁉︎」


英語の教科書とノートを私の机に置いてオロオロと慌てる蘭子。


そんな蘭子を理子ちゃんが疑わしげに見つめる。


「鹿目さん、もしかしてさっきの言葉で茅乃を傷つけたんじゃないの?」


「えっ、マジで⁉︎ 茅乃、そうなの?」


肩に手を置いたまま私の顔を無理やり覗く蘭子。


理子ちゃんの推測は間違っていない。


傷ついたかと聞かれたら傷ついたけど、涙をこぼしたのは蘭子のせいじゃない。