影と闇

これで終わりではなかった。


私が蘭子と仲よくなって数か月後のある日の出来事が頭の片隅に今も残っている。


その日、次の授業が当時の担任の先生が担当する授業だったため、必要なものをすべて置いて座りながらはじまるのを待っていた。


授業がはじまるまでの間はやることがなかったので、予習しようと置いていた教科書をめくった。


と、そのとき。


廊下になにか重いものがいくつか投げ飛ばされたのが見えた。


いったいなにが廊下に落ちたんだろう。


教室を出てすぐに、それはあった。


廊下に落ちてあったのは、数学の教科書と参考書、さらに数学のノートだった。


教科書と参考書だけ見ても誰のものかわからない。


そう思った私は、しゃがみ込んで数学のノートに手を伸ばした。


ノートの表紙には、小さいながらもきれいに書かれた“芦谷末那”という名前が書かれていた。


芦谷末那か、聞いたことある。


当時、末那も蘭子と同じく目立つ存在だったけど、同じクラスの女子数人にいじめられていた。


かわいそう。誰がいったいこんなことをしたんだろう。


ノートを握る手に力がこもり、自分のもののようにノートを抱きしめる。