まばたきをする私をよそに、校長先生と蘭子が会話しはじめる。


「ほぉ、鹿目さんのスマホに映ってる女子生徒はいったい誰だね?」


「この子は、私たちと同じクラスの芦谷さんです。芦谷さんは茅乃の頬をぶったあと逃げてガラスを割りはじめたみたいですよ」


「おや、それはいかん! 早く芦谷さんを止めないといけないじゃないか!」


「大丈夫ですよ、校長先生。私たちで芦谷さんを止めますから」


話を聞いた校長先生がびっくりした顔で蘭子の肩に手を置くが、蘭子はなぜか不敵な笑みを浮かべた。


蘭子はなにを考えているの?


そう思う私を完全にスルーして、蘭子がスマホをしまって私の腕を引っ張った。


「茅乃、今すぐ芦谷を止めよう。ここで止めなきゃ私たちが危なくなる!」


「うん、わかった!」


驚いていたせいか、心にたまっていた疑問をぶつけることができず、素直に蘭子の指示に従った。


そしてふたりがかりで暴走する末那をおさえ、なんとか空き教室から出した。


末那は私と蘭子の腕の中で抵抗しているが、校長先生は敵を見るかのような目で末那を睨んだ。


ここに以前の末那がいないと思うと胸が痛くて、私は涙を床にこぼしていた。