「……ねぇ、茅乃ちゃん」


我に返って、慌てて末那に視線を向ける。


末那は、眉をハの字にして心配そうな顔をこちらに向けていた。


「ごめん末那、ちょっと考えごとしちゃって」


言葉を詰まらせながらも言いたかったことを言いきったあと、末那の表情が少しやわらいだ。


よかった。


「茅乃ちゃん。私、最近クラスの誰かに睨まれてる気がするんだけど、気のせいかな?」


しかしすぐに顔色を変えて、不安そうな表情で教室を見まわした。


末那がクラスの誰かに睨まれてる?


末那がそんなことを思っていたなんて気づかなかった。


誰に睨まれているんだろう。


そう思いながらあたりを見まわすと、クラスの女子のひとりと視線がぶつかった。


やばい、こっちを見てる!


彼女が、末那に睨みの目を向けている犯人ってことかな。


心の中では冷静に言えたものの、どうすればいいかわからなくてオロオロしてしまう。