影と闇

でも、末那が泣いている理由を、私たちはわからない。


私と蘭子以外のクラスメイトは、末那に対して嫌悪感丸出しの表情でヒソヒソと話した。


「なんで泣いてるの？ 意味不明」


「夢を見てるんだよ。夢の中で嫌な出来事があったから泣いてんじゃない？」


「いや、芦谷さんは誰も味方がいなくなったことにショック受けてるんだよ」


「だからってズタズタな制服着る必要なくね？ 制服がズタズタになったら先生に知らせるだろ」


「修学旅行のときより怖さが増してるんだけど」


「わかるわかる」


クラスメイトの話し声は末那の耳には聞こえないらしく、クラスメイトまでもをスルーして私のほうを再び鋭い目つきで見る。


教室を包む空気をなんとかしようと、蘭子の前に移動したそのとき。


パシンッ‼︎


教室にそんな乾いた音が響き渡った。


それと同時に、左頬にヒリヒリと痛みが帯びるのを感じた。


今なにが起こったの？


状況を理解することができず、痛む左頬を手でおさえながら、まばたきすることしかできない。