影と闇

ほっとひと安心する。


だけどすぐに蘭子の視線に気づいた。


マズい!


『ご、ごめん! まさか鹿目さんが私に話しかけてくれるなんて予想もしていなかったから幻覚なのかと思って……』


慌てて両手をブンブンと左右に振ってみせる。


これだけでは蘭子の怒りはおさまらないだろう。


なんせ、蘭子は怒らせると怖いという噂が学校内で広まっているから。


私が次のターゲットになるのは目に見えている。


もう終わりかと思いきや、蘭子は予想に反して私の肩を再び叩いて笑いだした。


『あはは、片桐さんって本当おもしろいね。そんな必死に謝らなくてもいいのに。だって私、片桐さんと仲よくなりたいって思ってるんだもん』


他人におもしろいと言われたのははじめてだ。


今まで周りの人たちにおもしろいと言われたことが一度もないから、なんかくすぐったい。


蘭子は本気で私と仲よくなりたいと思っているのだろうか。


今度はこのことに疑問を覚えた。


派手な容姿で学年で一番目立つ蘭子と、とくになんのとりえもない地味な私が気が合うとは思えない。