影と闇

クラスメイトの反応に満足したためか、頬をゆるめてしまう。


誰にも気づかれないように笑ったそのとき、ガラガラッと教室のドアが開いた。


誰が入ってきたかはわからないが、ここのクラスの生徒なのはたしかだ。


そのことは考えなくてもいいよね。


意識をクラスメイトに戻して会話に加わる。


「ねぇねぇ。いったいどんな努力をしたら、サリナちゃんみたいになれるの?」


「え、サリナちゃんに似てるかな? 親戚が美容師だから、その人にアドバイスもらってそのとおりにやっただけだよ」


「え〜、すごい! 親戚の人のアドバイスだけでこんなに変わっちゃうの? すごいじゃん!」


「そんなことないよ。私はただアドバイスどおりにやっただけだから」


言葉を出すときに声がうわずるが、それをスルーして会話を続ける。


と、ここで先に教室に来ていた理子ちゃんが人波をかきわけて駆け寄ってきた。


「可愛いじゃん、こっちのほうが断然いいよ! 前はもっと地味だった……あっ、ごめん!」


「いいよ。私が地味だったのは、いつわりのない事実だから」


理子ちゃんも、私に話しかける前は地味子だと思っていたんだ。


ちょっとショックだけど、今は関係ない。