影と闇

蘭子たちに微笑むと、びっくりして声を出せなくなっていた蘭子がやっとで声をあげた。


「えっ、あんたもしかして……茅乃?」


わなわなと唇を震わせて、人さし指を私に向けて震わせている。


信じられないとでもいうようなその顔に対しても笑顔で対応する。


「うん、そうだよ。茅乃だよ」


目を細めながらそう答える。


その瞬間、蘭子が「えぇっ⁉︎」と叫んで慌てはじめた。


周りにいる子たちも焦りはじめる。


「嘘でしょ⁉︎ あれが茅乃なの⁉︎」


「おとといまではおとなしい格好してたのに⁉︎」


「えっ、マジ⁉︎ あんなにもの静かで目立とうとしない茅乃が⁉︎」


「奇跡だよ奇跡! 自分から積極的に行こうとしない茅乃がこんなふうになるなんて奇跡しかないよ!」


驚きの声に興奮の色が見られて、また違った反応に見える。


ここにいるのが私だと気づかなかったことになぜか嬉しさを感じる。


蘭子たちの反応を微笑みながら見つめる。


慌てふためく子たちの前に立ち、蘭子が唇を再び震わせた。


「いや、あんた……本当に茅乃なの?」


「そうだよ。私は茅乃だよ」


「ありえないって! その見た目、絶対茅乃じゃないよ! 騙されないよ!」


ブンブンと首を左右に振って、まるで自分に言い聞かせるかのような言葉を吐く蘭子。