影と闇

誰も、私の姿を見て私が片桐茅乃だと気づかない。


驚きを見せて騒ぐクラスメイトたちを尻目に、蘭子のもとへ歩み寄る。


私が来ても蘭子はこちらのほうに目を向けることなく、友達との会話に夢中になっている。


窓側の席で笑い声をあげる蘭子の肩を軽く叩いて声をかける。


「おはよう、蘭子」


「おはよ、茅……えっ⁉︎」


ようやく私に気づき、こちらを振り向いた瞬間、飛び出るくらいに目を見開いた蘭子。


蘭子だけでなく、今まで私に気づかなかった周りの女子たちも驚きの声をあげた。


きれいな蘭子たちの顔が崩れる。


蘭子たちも疑問の声をあげている。


「なんで……」


「どうして蘭子の名前を知ってるの……⁉︎」


「どう見ても同じクラスの子じゃないのに……」


「誰なの⁉︎」


周りの女子たちが大きな声でそう言うなか、蘭子は目を見開いたまま呆然としていた。


蘭子たちもまだ私だと気づいていないようだ。


『そのときに見た目を変えて登校すれば、みんなにとってのいいサプライズになるよ!』


公園ではげましてくれたミカの言葉が頭の中でよみがえる。


その読みは当たっていた。


クラスメイト全員にとってのいいサプライズ。


それは、私が今までの自分とお別れしてイメチェンすることだ。