影と闇

やばい。


昨日蘭子が足蹴にしていた子を視界に映したら、蘭子はその子につかみかかる。


わかっているのに、視線をそらせない。


なぜならびくびくしながら歩く私を、その子が眺めるように見つめていたから。


これは絶対にバレる!


なんて思ってギュッと目をつぶるが、しばらくたってもなにもやってこない。


不思議に思って目を開けるも、蘭子に足蹴にされた子がいない。


まさか……!


一気に恐怖感に襲われるが、私の隣にはいまだに蘭子がいる。


蘭子は私に視線を向けていないせいか、私の視線に気づいていない。


蘭子がどこかを見ている隙に、ゆっくりとうしろのほうを向いた。


振り向いた先には蘭子に足蹴にされた子がいて、蘭子に気づかれないように私に頭をさげた。


えっ?


私はなにもしていないのに、なんでお辞儀したんだろう。


意味はわからないが、私もお辞儀をする。


それを見たその子は嬉しそうな顔をしたあと、去っていった。