パシパシと蘭子の肩を叩いてそう言う。


クラス全員がバスに乗ったところで、ようやく担任の先生がバスに乗り込んだ。


「あっ。やっとで来たよ、せっかち先生」


蘭子が私の頭を撫でるのをやめた。


クラス全員の注目が先生に集まる。


「これから学校に帰るが、忘れものはないな?」


肩で息を整える先生に笑いが込みあげてきそうになるのをおさえながらうなずく。


他のクラスメイトもうなずいた。


「そうか。それじゃあ学校に向かうまでバスで移動する」


先生の声を合図に、バスのエンジンがかかる音がして動きだす。


ここから学校まで2時間はかかるだろう。


だけど、その間は蘭子と会話で盛り上がるから乗りもの酔いなんてすぐに忘れる。


話題は今人気のアイドルグループのこととか、ファッションのこととか、私のイメチェン計画のこととか。


イメチェンか。


ずっと先にやるものとばかり思っていたけど、蘭子と理子ちゃんが私のために服を選んでくれるなんて思ってもみなかった。


ミカも、自信を持ちたいなら身なりを変えたほうがいいと言っていた。


友達が変わったほうがいいって言うなら。


イメチェンして、自信が持てるなら、そうしようかな。


このままでもいいという思いもあったけど、いつまでも末那の引き立て役になるのは嫌だ。


家に帰ったら、さっそく計画を進めるぞ。


心の中で決意したとき、バスの窓から見える景色が美しく見えた。