影と闇

だからといって、末那や蘭子が可愛くないというわけではない。


私よりも可愛い女の子は、探せばどこにでもいるし、サリナちゃんだけじゃないと思う。


でも、彼女はレベルが違う。


違いすぎるんだ。


“世界一”という言葉をつけても違和感がない美少女の彼女をモデルに、私がイメチェンしなさいっていうの？


それはちょっと。


「たしかに可愛いね……」


「でしょ。もし茅乃がサリナちゃんみたいな格好にイメチェンしたら、絶対に人生が一気にガラリと変わる気がするの。だからさ……」


「ら、蘭子」


「ん？ どうした、茅乃」


「ちょっとこれはレベルが高すぎるよ。私の服がこの子に似てるからって、完璧に似せることなんてできないよ……」


首を横に振って否定したそのとき。


ポケットに入れたスマホが震えるのが見えて、蘭子に「ちょっと待って、誰かからのメッセージが届いたみたい」と伝えてスマホを取りだす。


予想どおりメッセージが届いていた。


ふっと息を漏らして画面にメッセージの内容を表示させる。


「ひっ……‼︎」


それを見た瞬間、悲鳴をあげてしまった。


慌てて手で口をふさぐが、蘭子や近くの座席に座るクラスメイトがこちらに視線を向けるのが見えて、顔が熱くなる。