影と闇

自分のことじゃないのに、やる気満々だ。


いくらなんでも無理でしょ。


私が着ている服がその“サリナちゃん”の服装に似ているからといって、完全に“サリナちゃん”になれるわけじゃない。


心の中でつぶやきながら窓に視点を変えて頬杖をついていると、またしても肩を叩かれた。


誰が叩いたかなんて言わなくてもわかる。


「ねぇ茅乃、さっきサリナちゃんって誰だって言ったよね? この子だよ、左から2番目に立ってる女の子」


イメチェンについて考えている間にスマホで“サリナちゃん”の画像を検索していたらしく、妙に興奮した様子で画面を見せる蘭子。


テンションの高い蘭子に若干ビビりながらも、蘭子のスマホの画面を視界に映す。


そこには、5人の女の子がこちらに目線を向けて、それぞれポーズを決めている画像が表示されていた。


言われたとおり、左から2番目にいる女の子を見てみる。


「へぇ……」


この子がサリナちゃんか。


私とはまったく違う世界にいる感じの子だ。


キラキラの粒子をまとっているかのようないつわりのない笑顔。


派手すぎず地味すぎずという程度の容姿。


文句のつけようがない整った顔立ち。


こんな可愛い子がこの世界にいるのかと疑うくらい、彼女の容姿に目を奪われた。