影と闇

よくわからないけど。


とにかくその“サリナちゃん”という女の子が人気を集めているアイドルだとはわかった。


なぜ私がそんな疑問を蘭子にぶつけたのか、自分でもわからない。


と、突然、蘭子が両手を合わせた。


「そうだ、いいこと思いついた!」


なんだろう。


蘭子のことだからイメチェンの話の続きだろうと思うけど、蘭子の言う『いいこと』がなんなのかはわからない。


「イメチェンするなら、サリナちゃんをモデルにしたら? サリナちゃんって茅乃みたいに可愛い服着てるから、イメチェンしたらきっとサリナちゃんみたいに……いや、本物のサリナちゃんになれるよ!」


えぇっ。


さっきの女子グループが話していた“サリナちゃん”がどういう子かはわからないけど、私がアイドルグループのメンバーそっくりの顔になるわけがないよ。


ハードル高すぎるよ、蘭子。


地味子な私が“サリナちゃん”という子に変身できるんだとしたら、絶対に女子全員の憧れの顔になってるよ。


「れ、レベルが違いすぎるって、蘭子。私には無理だよ……」


ひかえめにつぶやくが、蘭子の耳には届いてないようで、「う〜ん、どういうコーデがいいかな」と言いながら考えている。