影と闇

些細なことによって蘭子に気に入られたらしい女子グループの子たちが蘭子にもらったファッション雑誌を広げてはしゃいでいる。


そんなことは昨日までは起こっていないはずだったのに、いつの間に気に入られたんだろう。


羨ましい。


私もその女子グループに入ってみたいな。


少しばかりの羨望を抱く。


なんて思っていると、蘭子に肩を叩かれた。


「ねぇ、茅乃」


「なに?」


「昨日の話……実現してみようよ」


昨日の話?


いったいなにを言っているんだろう。


首をかしげる私に、なぜか目をキラキラさせて耳もとでささやく蘭子。


「昨日の夜、イメチェンしてみようかなって言ったじゃん。茅乃のその夢、叶えてあげようと思って」


そのこと、まだ忘れてなかったの?


てっきりイメチェンのこと忘れているかと思ったんだけど。


「あの、蘭子」


「んー?」


昨日のことは嘘だと言わないと。


冗談のつもりで言ったんだと言わないと、誤解されたままになる。


言いたいことを蘭子に言おうと思ってもそれを口にすることができなくて、別の言葉を出した。


「“サリナちゃん”って誰?」


「知らないの⁉︎ 女子高生の間で今大人気のアイドルグループのメンバーだよ! 女の子でサリナちゃんを知らないのは茅乃だけだよ!」