影と闇

そんな私に気づき、ボーッとした顔で首をかしげる蘭子。


「……茅乃? おはよ……」


笑ったことに気づいているのかわからない表情。


まじまじとその顔を見つめる。


メイクを落としたすっぴん顔だけど、それでも十分きれいな肌をしている。


ニキビはひとつも見あたらなくて、シワやシミもそばかすもまったくない。


しばらく見つめていたせいか、ようやく目が覚めた蘭子が我に返った。


「見ないで! 私、すっぴんだから!」


見ないでって言われても。


いくら私でもすっぴんを見られるのは嫌なのかな。


両腕で自分の顔を隠しているのを見ると、蘭子は本当に自分のすっぴんが嫌なんだな、と勝手に納得してしまう。


よつんばいになって、ドレッサーに置いてあったらしいメガネをかける蘭子。


「ごめんね、茅乃。自分のすっぴんがどうしても嫌で。今、とびっきり可愛いメイクをするからね!」


「うん……」


今からメイクするならメガネをする必要はないんじゃないかと思ったけど、すっぴんを見られたくない蘭子を見ていると共感を覚えて、ツッコミを入れるのを忘れた。


さっきまで寝ていたのが嘘みたい。


ツッコミを入れるのを忘れてる私などおかまいなしに、蘭子がバッグの中から化粧ポーチを取りだし、ドレッサーの前に座る。