影と闇

やはり私の目はかすんでいなかった。


スタンドと一緒に机に置かれている白くて小さな紙きれを見つけた。


「……やっぱり」


ボソッと小さくつぶやく。


服が入った袋をもとの場所に戻し、紙きれに手を伸ばす。


カサッと枯れ葉がこすれ合う音がしたので、たぶん誰かが紙を机に置いたあと半分に折ったのだろう。


ゆっくりと紙をめくってみる。


【片桐さん、昨日はいろいろとごめんね。


君にはたくさん迷惑をかけてしまったと思います。本当にごめん。


この気持ちを紙でしかぶつけられなくて、我ながら情けないね。


昨日みたいに、班行動で片桐さんとどこかでバッタリ会うことがあると思います。


そのときに昨日のおわびとお礼をさせてください。


それじゃあね。沖田】


華奢でいて、それでキリッとしたきれいな文字。


言葉とともに目に入った文字がとても美しくて、思わず「わぁ……」と声を漏らした。


だって、学年一モテる沖田くんからの手紙だよ?


地味子である私でも嬉しくないわけがない。


あまりに興奮していたのか歓声に似た悲鳴をあげそうになり、慌てて口を手でふさぐ。


と、そのとき。


クローゼットがゆっくりと開き、中から寝グセをつけた蘭子が出てきた。


もちろんパジャマ姿だけどおしゃれにこだわる蘭子がパジャマ姿なのがおかしくて、口をふさいだまま笑った。