影と闇

さっそく駆けだしたいが、さっき見たときより雨が強くなってきて、行くのをためらってしまう。


「はぁ……」


どうしよう。


こんなに雨が強くなるなら、雑誌を買うのを我慢すればよかったな。


雨は嫌いではないけど抵抗がある。


バッグから折りたたみ傘を取りだし、それを広げてさす。


外に出てからまだ一歩も動いていないのに、地面を激しく打ちつける雨は私のさした傘に容赦なく降りそそぐ。


頭上で響く強い音に思わず耳を片手でふさいだ。


小さいころを思い出す。


風邪をひいたときのことを思い出す。


雨に濡れたくらいで風邪はひきたくない。


しかも修学旅行のときに。


再びため息が出そうになるが、幸せが逃げてしまうという意識でなんとか口の奥に押し込める。


それと同時にバッと勢いよく駆けだしていった。


バッグを脇にはさみ、落ちないように握りしめる。


今日持ってきたバッグも叔母さんに買ってもらったもので『どこか遠くに出かけるときに使ってね』と言われたんだ。


私は『そんなカバン、私には似合わない』と購入を拒否したけど結局叔母さんの押しに負けて買った。