影と闇

胸に手を置いてひと息ついたそのとき。


頬に小さな水滴がポタッと落ちてきて、思わず目をつぶる。


メイクを落とさないように慎重にその水滴を落としながら視線を上にあげると、厚い雲に覆われた空から雨が降ってきた。


昨日見た天気予報は間違っていなかった。


こういうときに折りたたみ傘を持ってきて本当によかった。


バッグから折りたたみ傘を取りだし、傘をバッと広げる。


そのタイミングで理子ちゃんがソフトクリームを食べながら「あっ」と声をあげた。


「どうしよう。昨日は天気予報なんて見てなかったから、傘持ってきてない……」


少し顔を青ざめる理子ちゃんの顔にも、雨粒は容赦なく降ってくる。


こちらを見おろす空が私たちをあざ笑っているかのように。


ブランドものの傘をすでにさしている蘭子が首をかしげながら理子ちゃんを見ている。


「阪口、傘ないの？」


「うん。雨降るなんて知らなくて……」


そう言ってから体を震わせる理子ちゃん。


もしかしたら、だんだんと強くなってくる雨に打たれて体が冷えたのかもしれない。


傘を持ってきてなかったせいで風邪をひいてもらっては困るので、こう提案した。


「そうだ。近くにコンビニがあるから、そこで傘買おうよ。それなら理子ちゃんも安心するでしょ？」


人さし指を立てながらひらめいたような顔をふたりに見せる。


その直後、ふたりが目を見開いてお互いの顔を見つめ合った。