影と闇

負のオーラが出まくり、か。


たしかにそれは言えてるかも。


普段の末那を明るい雰囲気をまとっていると表現するなら、今日の末那は負のオーラをまとっていると表現してもおかしくない。


地味な私が言うのはおかしいかもしれないけど、地味で暗い感じがするのだ。


それを感じ取ったのは私だけではなくて、末那のファンである男子たちもだった。


「どうしたんだ、あいつ」


「嫌なことでもあったのか?」


「あんな顔になるくらいだから、よほどなにかにうなされてたのかもな」


「しかも服シワシワだぜ? 着ていく服にアイロンや洗濯もかけられない状態だったとしたらマジやべぇよ……」


男子たちは末那の服装にも目をつけていたらしい。


自分たちにとってアイドルのような存在である末那の変化にいち早く気づくのは当たり前だといっても過言ではない。


私だって、もし憧れの男子がいたとして、その男子が普段見せない行動を見せたら変だって思うもん。


好きな人の変化に人一倍敏感でもおかしくない。


バスに乗っているクラスメイトのほとんどがコソコソと話している様子をスルーして、担任の先生が乗り込んだと同時にみんなに声をかける。


しかし、誰ひとりとして先生の話に耳をかたむける生徒はいなかった。


蘭子も眉間にシワを寄せながら一番うしろの席に座っている末那に視線を向けている。