そうなの⁉︎


彼女ができたとか、他の女の子とふたりきりで歩いたとか聞いたことがないのに、そんな噂が流れているなんて。


しかも沖田くんは、うちのクラスの女子の誰かが好きかもしれない?


あ、あはは……。


「ま、まさか。そんなことあるわけないじゃん」


必死になって心の中の感情を表に出さないように笑ってみせる。


しかし、蘭子はいたって真面目に言葉を返した。


「いや、本当だって。私さ、沖田くんの友達の男子に聞いたの! そしたらマジで好きな女子がいるって言ったのよ!」


どうやら蘭子が本当に聞いた話らしい。


これが本当なら、“噂”ではなくて“事実”だというべきではないかと思うけど。


心の中ではそうつぶやきながらも、蘭子に負けないくらい目を見開いてみせる。


「沖田くんが……?」


「そうなの! 沖田くんの好きな女子は芦谷じゃなくて絶対に茅乃だよ! 少なくとも、私はそう思ってるよ!」


えぇっ。


そんなことあるわけないよ絶対。


末那の引き立て役みたいな、地味な私のことなんて好きなわけないよ。