咲いていた桜が散り終わった、初夏の昼さがり。


持ってきた弁当を食べ終わって自分の席で勉強をしていると、ひとりの女子が私のところに駆け寄ってきた。


芦谷 末那(あしや まな)。


高1からの親友で、クラスで一番仲がいい。


誰にでも優しく接して、頼まれたことはちゃんとこなしている。


容姿だって性格に負けていない。


胸の下まで伸ばしたつやつやな黒髪に、清純な印象を受ける整った顔立ち。


私より背が低くて、守ってあげたくなるほど小柄で華奢な体型。


対する私はいいところなんてなにもない。


私、片桐 茅乃(かたぎり かやの)は、どこにでもいる普通の女子高生。


自信のある顔のパーツなんてひとつもないし、お世辞にも可愛いとは言えない顔立ちをしている。


自信のないパーツだらけの顔を隠すために小さいころから伸ばし続けている髪が唯一の自慢。


どれほど劣等感を感じたことか、数えきれない。


なんて思っていると、末那が私の意識を引き戻すかのように声をかけてきた。