「……長谷川は、難しいよ」

「え?」



言われた直後は、一体なんのことだかわからなくて。

だけど少し経って意図に気付いたわたしは、つい顔が熱くなるのを止められなかった。



「えっ、な……っ」

「ごめんね、こないだ会ったとき、なんとなくわかっちゃってさぁ。……あの頭でっかちは、気づいてないだろうけど」



まだ2回しか会ってない人に、奏佑先輩のことがすきってことを、知られてるなんて。

恥ずかしさから、思わず頬を両手でおさえてしまう。

……けど……『難しい』、って?



「……あの、乾せんぱ……」

「ごめん、あんまり詳しい話は俺から言えないけど。……でも俺、月舘さんの味方するから。だからふたりきりになれるように、俺は海の件、断っとくね」



言うが早いか、それじゃあ、と乾先輩は、片手を挙げてこの場を去ってしまった。

わたしは呆然と立ったまま、その後ろ姿を見送る。


……よく、わからないけど。

すきな人のお友達が協力してくれるっていうのは、普通いいこと、なんだよね?



『……長谷川は、難しいよ』



何も知らない、わたしは。

このときはまだ、先輩の言葉の意味に、気づけなかった。