けれど次の先輩のセリフに、わたしの気持ちは一気に急降下することになる。



「それで──もし花音ちゃんの友達で行きたい人がいれば、その人にも伝えておいてほしいんだ」

「え」



思わず、わたしはまた手を止める。

視線の先の奏佑先輩は、いつもと同じ微笑み。



「やっぱさ、ふたりだけより、人数多い方が楽しくていいし。それにふたりきりだと、誤解されたりとかいろいろあるしねー。花音ちゃんも、それは嫌でしょ?」

「……ッ、」



誤解? 誤解って、たとえばわたしと先輩が、恋人同士に見えるかもしれないとか?

……わたしは、それでもかまわないのに。

だけどそんなこと、口にできない。

ましてや先輩本人の前でなんて、絶対に言えない。


そしてわたしは、あることに気がついた。

──もしかして奏佑先輩には、誤解されたくない人が、いるの?

わたしと恋人同士に見られたら、困る人が、いるの?


ただそばにいて、他愛ない話をしてるだけで、幸せで。

だから、考えたこともなかった。

……先輩にはもう、すきな人や付き合っている人が、いるのではないだろうか。