「ふざけんじゃないわよ。だいたい……」

「ふざけてなんかねぇよ」



思いのほか真剣な声音につられてみれば、これまた思いのほか真剣なヤツの眼差しにかち合った。

私は続けようとしていた言葉を、思わず一旦飲み込んでしまう。



「……本気なの? 花音のこと」



ようやく発した私のその質問には、ただムカつく笑みを浮かべただけ。

これ以上話すつもりはないらしく、進藤 刹はくるりと踵を返す。

そのタイミングで、あることに気づいた私は──一瞬考えてから、その後ろ襟をぐいっと引っ張った。



「うぐ?!!」



当然だがいきなりのことに首が絞まった進藤 刹が、ものすごい剣幕でこちらを振り向く。



「ッてめぇクソ女、いきなり何すん──、」

「うるさいわね。いいこと教えてあげるからアレ見なさい」

「あ?」



私はその場から数歩移動して、ある方向を指さした。

そこには、渡り廊下の窓から外を見つめる花音の姿。

そしてさらにその視線の先、校舎脇にある、水飲み場には──。