「えっと、だから……先輩は、大丈夫です」



──ご、ごめんなさい。なんか、よくわかんない感じに、なっちゃいました。

そう言って彼女は、なんだか恥ずかしそうに頬を赤く染めて、うつむいた。

対する俺はというと、情けなくもポカン、と呆けた顔でそんな花音ちゃんの様子を見つめてしまっている。



「先輩?」



そんな俺の様子に気づいた彼女が、少し不安げに声をかけてきた。

ハッとして、俺は口を開く。



「あ、いや、ごめん……世の中にはこんなに可愛いげのある女の子もいるんだなあって、ちょっと感動してた」

「へっ」



比べるのも失礼にあたるくらいだけど、まどかなんてサバサバのキレキレで可愛いげなんてないからな。

だから正直、俺の中で女子に対して求めるもののハードル低くなってたんだけど……花音ちゃんは、軽々とそのハードルの上をいく言動をしてくれる。


花音ちゃんは俺が言ったセリフに、カァッとまた顔を赤くする。

それについ笑って、俺は改めて、体ごと彼女に向き直った。



「ありがと、花音ちゃん。元気出た」

「あ、な、なら、よかったです」



照れくさそうに微笑む彼女に、また笑みを返す。

そこで花音ちゃんが、再び鍵盤に手を添えた。