開け放たれた窓の外をぼんやり見つめながら、深いため息を吐く。
するとそれまで軽快なメロディを奏でていた彼女が、ピタリとその指を止めた。
「奏佑先輩、お疲れですか？」
「え？ あ、いや……」
ああ、そうだ今は、このコと一緒だったんだ。
彼女──花音ちゃんが気持ちよくピアノを弾いているところを邪魔してしまったと、思わず言葉を濁す。
彼女は完全にピアノを弾く手を止めて、じっとこちらに顔を向けていた。
「疲れてるといえば、まあそうなんだけど……うーん……」
「それじゃあ、何か悩み事ですか？」
「……まあ、そんなとこ」
部活内の、しかもキャプテンをしている者ならではな、部員たちのまとまりに関する些細な悩みなんてもの。このコを煩わせる理由に値しない。
そう考えた俺は、これ以上花音ちゃんが追及することないように、にっこり笑みを浮かべてこの話を切り上げようとした。
そして同時に、花音ちゃんの悩み事はどうなったのかな、とも頭の隅で思ったけれど、口には出さない。
聞かれたくない、のは、きっとお互い様なのだ。
けれども花音ちゃんは、そんな俺をまたじっと見つめて。
そしてゆっくり、口を開く。
