──わたしとしおちゃんが教室を出ていった、そのすぐ後。



「……ねぇ、ちょっと」



たまたま近くにいた、わたしと同じクラスの京子ちゃんと紗理奈ちゃんに、刹くんは話しかけていた。



「あのさ、花音……月舘さんと、いっつも一緒にいるあの子って……」

「ああ、神崎さんね。神崎 潮さん。あのコすっごい美人だよねー」

「いや、別にそれはどうでもいいんだけど」



バッサリ言い放った刹くんに、京子ちゃんは目をぱちくりさせる。

すると紗理奈ちゃんが何だか楽しげな様子で、続けて口を開いた。



「神崎さんと花音ちゃん、中学生のときからの親友なんだって。何かと目立つふたりだけど、いっつも神崎さんが、花音ちゃんのこと守ってるの」

「へぇ……ちなみに月舘さんって、付き合ってる人とかいるの?」

「あー、なんかそんな感じじゃないよね。なんていうか、あのコはクラスのみんなにかわいがられてるマスコット的存在だから」



笑い混じりの京子ちゃんのそれに、紗理奈ちゃんがうんうんとうなずく。



「そうそう。それに花音ちゃんって、男の子苦手みたいだし」

「……え?」



彼女の言葉に、今度は刹くんが、驚いたように目を見開いた。



「何それ……なんで、」

「さあ、詳しくは……なんかトラウマがあって、とかなんとか」

「……ふーん……」



そんな会話が繰り広げられていたことを、わたしたちは、知らない。