──進藤 刹くん。

小学校の1、2年のとき同じクラスだった彼の、明るい性格と物怖じしないその態度は、まさに人気者のそれで。同級生たちは、よく彼の回りに集まった。

だけども3年生のときお父さんの仕事の都合で、転校してしまった男の子。

……そしてその頃よく、わたしの髪や瞳の色のことで、からかっていた男の子。

当然わたしは、彼が自分のことを嫌っているから、ああいうことをしていたんだと思っていたけれど。



『久しぶり。俺の顔、忘れた?』



あの、偶然の再会から数日。

なぜか彼はしょっちゅう、先ほどのようにわたしのことを訪ねては……あの頃のことなどまるでおかまいなしに、なんでもないような会話をしていったりしている。


彼が転入してきたその日は、とても混乱して、それは放課後までずっと続いていて。

そしてなぜか意識しないまま、奏佑先輩が所属するサッカー部が使用している、グラウンドのところに来てしまっていた。

もしかしたら先輩の、あのやわらかく包んで癒してくれるような雰囲気を、無意識に求めていたのかもしれない。


あのとき先輩はわたしの異変を何か感じとったのか、「何かあった?」って言ってくれたけれど。

これは自分のことなんだからと、わたしは「なんでもない」と言って、そのやさしさに首を振ったのだ。