──ああ、なんて言えばいいんだろう、この感覚。

言葉になんてできない。きゅっと切なく胸をしめつけられる、感情の名前。

高鳴る鼓動を確かめるように、胸元の服を思わず握りしめた。



「ひとまずさ、つらいかもしんないけど立ち上がろっか。今日はもう帰った方がいいよ。俺、駅までなら送っていけるから」

「あ……」

「それとも、家まで着いてく?」



そう言って心配そうに顔を覗き込んできた彼に、首を横に振る。



「いえ……大丈夫です」

「そ? つーか花音ちゃん、今さらだけど同じ学校だよね? なんか見たことある顔なんだよなー」



その後、彼は一旦みんなのところへ戻って事情を説明し、置きっぱなしだったわたしの荷物も取ってきてくれた。

並んで歩きながら、それでもわたしが男の子が苦手なことや、体調を気遣ってくれていることが些細な言動からうかがえる。

申し訳ないと、思うのに。いつまでも駅に着かなければいいなんて、そんな不謹慎なことを無意識に考えてしまう。