「……あ」



ふと、ある1枚の写真に目がとまる。

これは、小学生の低学年の頃。わたしが肺炎か何かで入院したときに、病室でおじいちゃんと撮ったものだ。

このときはもう退院間近で、わたしはクラスメイトにもらった黄色くて小さなかわいい花束を、少しはにかんだ表情で胸の前に持っている。

そのすぐ横で笑顔を見せているのは、綺麗な栗色の髪をかっこよくオールバックにした、おじいちゃんで。

──それから、数ヶ月後だ。

いつだって若々しかったおじいちゃんが、突然の脳梗塞で、この世を去ったのは。



「……おじい、ちゃん……」



おじいちゃん、わたし、すきな人ができたんだよ。

その人は、サッカー部のキャプテンで、とってもやさしい、長谷川 奏佑先輩。

奏佑先輩は、おじいちゃんのことも、いいおじいちゃんだねって、ほめてくれたよ。

お嫁に行くのなんて、きっとずっと、まだまだ先のお話だけど。

それでも、男の子が苦手なわたしにとっては、少しだけ、前に進めた気がするよ。


じわりと涙が浮かぶ。

滲む視界で、写真の中のおじいちゃんを、そっと撫でた。