……参ったな。

俺は基本的に、広く浅く、の付き合いが性に合ってるのに。

儚げで、繊細で、もろそうな、彼女に。

これ以上、踏み込んではいけない気がする。




『わっるいオトコだねぇ、長谷川くん。あんな純粋そうな女の子たぶらかしちゃって』



そのときなぜか不意に、数日前、乾から言われたセリフを思い出した。

……別に、たぶらかしてなんかないよな。俺そんな、ナンパなこと言ってないししてないと思うし。


それに、俺は──。



「……それじゃあね。送ってくれて、ありがと」

「ああ。また明日な」

「ん。帰り気をつけてねー」



自分の家まであと数十メートルというところで、偶然そんな会話が耳に届いた。

視線を向ければ……そこにいたのは、やはり見知った人物たち。

片割れである背の高い男は俺の存在には気がつかなかった様子で、反対側の路地へと入って行った。

その後ろ姿を見送っていた女が、くるりとこちらを振り返る。



「よっ、サッカー少年。今帰り?」

「……ああ」



乗っていた自転車から降りながら、俺はぶっきらぼうに返した。

そんな態度もまったく意に介さない様子で、彼女──まどかは、ばしりと俺の背中を叩く。