「大丈夫ですよ、奏佑先輩。別に、秘密にするようなことでもないですから」

「へ……」



窓枠に手をかけて、外の景色に目を向けながら。

わたしはひとつ息をついて、話し始めた。



「昔……小学生の低学年の頃なんですけど。わたし、クラスメイトの男の子たちにいじめられてたんです」

「えっ」

「……わたし、こんな髪でしょう?」



これでも地毛なんですけどね、と、わたしは先輩を振り返って小さく笑ってみせる。



「今はもう亡くなってる、父方のおじいちゃんがドイツ人で、その血が濃く出たみたいなんです。色素も薄くて、くるくるウェーブがかってて……今でこそこうやって気にせず普通に伸ばしてますけど、やっぱり子どもにしてみれば“他と違うモノ”は、どうしても気になるみたいで……」

「………」

「それ以来、気づいたら、男の子が苦手になっちゃいました」



『ヘンなの』、『おかしい』、『ふにゃふにゃ妖怪頭』。

幼い頃胸に突き刺さった言葉たちが、不意に頭の中によみがえる。

わたしはそれを振り切るように、ぎゅっと目を瞑ってから、体ごと先輩に向けた。