突然頭上から降ってきた声に、パッと顔を上げた。

そこでわたしを見下ろしていたのは、さっきまで自分もいた合コンの席に見覚えのある男の子だ。

目が合った瞬間、不思議そうにしていた表情が、気遣うようなものへと変わる。



「わ、顔色悪いよ。平気? 立てる?」

「……え、」

「部屋出てったときなんか気になって、追いかけて来てよかった。花音(かのん)ちゃん、だよね? ダメじゃん、具合悪いんならちゃんと誰かに言わないと」



そう言って彼はわたしの横に同じようにしゃがんで、顔を覗き込んできた。

スポーツマンなのだろうか。さっぱりした黒い短髪に、日に焼けた、健康的な肌の色。

びく、と思わず反応して、少しだけ身を引いた。



「あの、わたしなんかに構ってないで、みんなのところに戻った方が……」

「いやいや、こんなとこで具合悪そうにうずくまってる女の子放っておけるわけないでしょ。涙目になってるし」



よしよし、と宥めるように、背中を彼の手がやさしく行き来する。

今日、初めて会った人……男の人、なのに。なぜか不思議と、こわい感じはしなかった。

あたたかいその手に、むしろ気分が楽になったような気さえする。