熱気集まるその光景に、思わず顔をしかめた。



「うーわ」

「蒸してるな……」



大勢の生徒たちが固まって、見るからに高い人口密度。

未だ残暑厳しいこの時期には、ちょっと……いやかなりキツい。

でもまあ、午後からの自分のためには仕方ない。ここで食料を手に入れないと、完全にガス欠する。

ひとつため息をつき、乾と連れだって人だかりの中に足を踏み入れようとしていると。



「(……ん? あれは……)」



自分から見て右の方向、人だかりからは少し離れたところに佇んでいる、ひとりの女子生徒。

その特徴的な外見には、覚えがあって。



「あれ、花音ちゃん?」

「え?」



思わずつぶやいた俺の声が聞こえたのか、女子生徒がこちら側を振り向く。

やはりそのコは、ここ最近知り合ったばかりの後輩だった。



「あ、奏佑先輩」



どこか困惑していたような表情から一転、今度は驚いた顔で俺の名前を呼ぶ。

俺は当然の流れで、購買のカウンターに向けていた足を彼女側に方向転換した。