「ほら。言ってよ、花音ちゃん」

「……先輩って、実は結構、意地悪なとこありますよね」



簡単に丸め込まれる自分が悔しくて、思わずくちびるをとがらせながら、彼の腕の中でつぶやく。

すると先輩はわたしを抱きしめたまま、小さく声を上げて笑った。



「ははっ、うん、そうだよ。やさしくするのは建前で、実は俺結構、意地悪だから。……だから花音ちゃんも、覚悟しててね」



後半のセリフは、思いきり耳元にくちびるを寄せて、低く甘くささやくように。

ピクリと体を震わせたわたしの反応を見て、先輩はまた笑った。

やっぱりなんだか、いつも奏佑先輩の方が、1枚上手なような気がする。

迫力なく睨むわたしに、先輩が「あはは、拗ねないでよ」と髪を撫でた。



「ねぇ、ほら、教えてよ」

「……ッ、」



顔を見られたくなくて、また強く、先輩の首元に抱きつく。

その肩口に顔を埋めるようにしたまま、観念したわたしは小さく口を開いた。