「……え……」



奏佑先輩との思い出の詰まった、あの部屋のドアを開けた瞬間。

中から聞こえてきた声に、思わず、うつむきがちだった顔を上げた。



「……ッ、そ……」



上げて、驚く。

だって、目の前に、いたのが──……もう2度と関わってはいけないと、思っていた人だったから。


先に行動を起こしたのは、目の前の人物の方だ。

わたしと同じ、驚いたような表情をしていたその人によって、左手首を掴まれる。

そして、強い力で思いきり引き寄せられた。

不意打ちのことに逆らえず、抵抗する間もなくその胸の中におさまる。

背中の方でドアが閉まる音を、呆然と聞いた。