「花音、おめでとう!」

「わっ」



無邪気な笑顔を浮かべるしおちゃんが、弾んだ声で言ったのと同時。

わたしの視界は、色鮮やかな何かでいっぱいになる。

差し出されたものを受けとってみると、それはとても大きな花束だった。

思わず、わたしも満面の笑みを返す。



「ありがとう、しおちゃん」

「すごかったよ、花音の演奏。聴いた瞬間、これは優勝確実だと思ったもん」

「あはは、それは大げさだよー」



言いながらわたしはまた笑って、自分の手の中にある花束に視線を落とす。

綺麗で、とってもいい香りがして。見ているだけで、穏やかな気持ちになれる。

ちょうど控え室を出てすぐの廊下に立っていたわたしたちは、並んで歩き出した。



「でもさ、大人も出るようなコンクールで優勝なんて、ほんとすごいよ。おじいさんとの思い出と、今までの練習の成果だね」

「ありがとう。ほんと、自分でもいまだに実感わかないんだけど……」

「そっか。まあとにかく、今日は早く家に帰って、ゆっくり休んだ方がいいね」