「俺、は……昔からずっと、まどかのことが……すきだった」

「……うん」

「……すき、“だった”」



するりと、自分の口から自然に出た言葉に、自分自身で驚く。

目の前で、まどかがやっぱり偉そうに腰に両手をあてながら、悠然と微笑んだ。



「ほら。もう答え、出てんじゃん」

「……ッ、」



『──奏佑先輩』



浮かぶのは、ピアノの前でやわらかく微笑む、彼女の顔。



「……たくさん……」

「うん」

「たくさん、傷つけたんだ。傷つけて、突き放して……」



戸惑いながらも、言葉を紡ぐ、と。



「──そう。なら、」



“姉の顔”をしたまどかが、ぐしゃぐしゃ豪快に、俺の頭を撫でくりまわしやがった。



「みっともなくても恥ずかしくても、ちゃんと謝って、ちゃんと自分の気持ちを伝えて。そしてこれからはたくさん、大事にしなきゃね」



すとん、と彼女の言葉が、胸の中に入ってくる。

俺の頭に片手を乗せたまま、にっこり、まどかは笑顔をみせた。



「姉離れオメデトウ、そーすけくん?」

「……うっせぇな」



情けなくも、目頭が熱くなって。

それを見られないように片手で目元を覆いながら、俺はうつむく。

だけど口元には、自然と、笑みが浮かんでいた。