「そのへんにしとけ。奏佑が不機嫌マックスだぞ」

「あははー、だってあたしかわいいコ大好きなんだもん」

「ったく……」



ほら行くぞ、と歩き出した鷹人さんに続いて、まどかさんも足を踏み出した。

すれ違いざまに、くるりとこちらを振り返る。



「じゃーねーふたりとも。帰り道気をつけんのよ」

「……ハイハイ。さっさと行けよ、低能大学生」

「かわいくないわねサッカーバカ。花音ちゃん、じゃあねー」

「あっ、は、はい…っ」



軽やかに手を振って、鷹人さんを追った彼女は曲がり角の向こうに消えた。

それを見届けた後、はあっと深く、先輩がため息を吐く。



「ごめん、あの人、ほんと騒がしくて……嫌な思い、させたね」

「え、そっ、そんなことないですよ! 楽しい人、ですね」

「……そう思ってくれたんなら、よかったけど」



眉を下げながら、ふ、と小さく、先輩は笑う。

行こっか、とつぶやき、また歩き始めた。



「………」



夕日に染まるその横顔を、気づかれないように、盗み見ながら。

女のカン、ってほんとにあるんだなあ、なんて、そんな馬鹿みたいなことを、わたしは考えていた。