「……からだ、大丈夫?」

「えっ」

「つらくない?」



隣を歩きながら、眉を下げてそう訊ねてくる奏佑先輩に。さっきまでの恥ずかしい時間を思い出して、一瞬で顔が熱くなるけれど。

わたしはすぐにぶんぶん、首を横に振る。

迷惑だけはかけたくないから必死で否定すれば、先輩は「そっか」とつぶやいて、ちょっとだけ口元を緩めた。



「……ッ、」



きゅん、と胸の奥が甘く疼く。

奏佑先輩の、眉が下がって、どこか困ったようにも見える、微笑み。

大好きな、微笑み。


ぎゅっと少しだけ、繋いだ手に力を込める。

すると彼はそれに気づいて、ただ重ねていただけの手を、絡めるような握り方に変えた。

それだけで嘘みたいに、わたしの心臓はまた激しく鼓動を打つ。