だけど、今。

このコに触れたいと、そう望んでいるのは、紛れもなく自分自身で。

彼女が、自分のことを選んだんじゃない。……自分が、彼女を選んだのだ。


白い肌のいたるところにくちびるを寄せ、手で触れると、素直に彼女は体を震わせた。

その声も、仕草も、表情にも。全部に、いちいち五感が反応する。

胸が締めつけられて、たまらなくなって。衝動で、潰されそうになる。



「ッ、花音ちゃん」



ベッドに半ばおさえつけるようにして掴んでいた左手首をそっと解放し、細い指に自分のそれを絡めた。

きつくつぶっていたまぶたを開いた、彼女の目じりで光る涙の粒を、自由な左手で拭う。

はだけたブラウス姿の彼女はそれでも小さく微笑んで、甘えるように、その手に擦り寄ってきた。



「そうすけ、せんぱい……──」

「……ッ、」



届いたささやきに、息を詰める。

……うれしい、なんて。

そんな声でつぶやくから、決心が鈍りそうだ。


本当はもっと、彼女をやさしく愛せる男がいい。

遠ざけて守りたいのも、こんな俺を嫌って欲しいのも。すべて、本当の気持ちで。

だというのに、ぶれそうになる。指先が震えるほどに、心の制御がきかない。

これからこんな自分に、何をされるかわかっていて……それでもただひたすらに綺麗な彼女が、たしかに、よろこんでいるのがわかるから。



「……花音……」



馬鹿だな、と思うと愛しくて。

そのひたいに、口づけた。