「だから──今さら、他のヤツなんかに渡さない」

「……え?」

「花音、すきなヤツいるんだろ? サッカー部で、1つ上の先輩」

「……!!」



唐突な彼の言葉に、わたしはカッと頬が熱くなるのを感じた。

どうして……なんで、刹くんが奏佑先輩のことを?

ハッと、彼がどこか悲しそうに笑った。



「ああ、やっぱりほんとなんだ」

「え……な、」

「だけど花音、イイコト教えてあげるよ」



そのセリフに、わたしは泳がせていた視線を向けた。

彼はさっきよりも近い距離で、やはり少しだけ口角を上げている。



「あの人、すきな人いるんだよ。まあそれも、叶わぬ恋、ってやつみたいだけど」

「……え……」

「前に、偶然話す機会があったんだ。生徒手帳に、そのすきな人の写真入れたりなんかしてさ。あれはそう簡単に、諦める感じじゃなかったな」



……ああ、もう、頭の中、ぐちゃぐちゃ。

刹くんが、わたしのことをすきだって。

奏佑先輩には、すきな人がいるんだって。

だから、じゃあ、わたしは──?