『──ヘンなかみ!』



あの頃そう言ってわたしのことをからかっていた男の子と、今自分の目の前にいる男の子が重なる。

切なげに細められた瞳が、ただまっすぐにわたしを射抜く。



「……ずっと、すきで。だけどもう、会うことも謝ることも、できないんだと思ってた」



けど、と、彼は続ける。



「親父がまた、こっちの方に転勤することになって。会える保証なんてなかったけど、それでも可能性に賭けてついてきた。そしたら、転入したその日に、同じ学校で会えて」



思い出す。

彼が転入してきたあの日。廊下で偶然出会った、あのときのこと。



「……ほんとに、うれしくて。だからもう、間違えたくないって、思ったんだ。絶対花音のこと、手に入れたいって」



1歩、彼がこちらに近づいた。

だけどわたしは、動くこともできない。

呆然と、刹くんの声を聞いていた。