「ひとりだよ。つーか花音の私服見るの、すっげぇ久しぶり。かわいーな」



明るい日差しの中、刹くんは屈託なく笑ってそんなことを言う。

思わずドキッと心臓がはねて、顔が熱くなった。

……奏佑先輩に、少しでも良く思われたくて、頭を悩ませながら、一生懸命選んだこのワンピース。

こうやって人にほめてもらえただけでも、救われたかな、なんて。



「あ、ありが、とう……」



だけど、予想外だ。刹くんが、……その、女の子に『かわいい』とか言うなんて。

小学生の頃は、なんていうか……あまり、女の子を“女の子扱い”していなかったのに。

でも、そうだよね。あれから、10年近く経っているんだから……そういう部分の認識だって、変わるよね。


……わたしは何か、変われたかなあ。



「──な、花音」



思考に耽っていたわたしは、刹くんのその言葉でハッとした。

自分より20㎝以上高い位置にある彼の顔を見上げると、刹くんはどこか、イタズラっぽい顔で笑っていて。



「どうせお互いにひとりなんだからさ、デートしね?」

「へ?」



間抜けな表情をしてしまっているだろうわたしに、やはり刹くんは、楽しげな笑みを深めるのだった。