スマホが電話の着信を知らせたのは、ちょうどわたしが朝ごはんを食べ終え、リビングでテレビを観ているときだった。

テーブルに置いたスマホの画面を確認すると、表示されていたのは奏佑先輩の名前で。

思わずドキッとして、あやうくスマホを取り落としそうになってしまった。

おそらく、今日の海に関する連絡だろう──そう思いつつ、わたしはドキドキする胸に片手をあてながら、通話ボタンを押した。



「も、もしもし」

《……あ、もしもし?》



ああ、先輩の声が、こんなに近くで聞こえる。

奏佑先輩と電話をするのは初めてで、だから余計に、うれしくて。

堪らなくなったわたしは、ぎゅっと目を瞑りながら「おはようございます、先輩」と小さくしぼりだした。

電話の向こうで、先輩がひゅっと息を吸うのが聞こえる。



《……うん、おはよう。ごめんね、こんな時間に》

「あ、いえ、もう起きてたので」

《……うん、そっか。それでね、今日の海のことなんだけど……》



続きを待つ、わたしの耳に。

そうして聞こえてきたのは、信じたくない、言葉だった。



《……実は急に外せない用事できちゃって、申し訳ないんだけど行けなくなっちゃったんだ》